「おなかのコード」 (その2)



 このネットワークは政府によって設立された。持ち主のいない使用可能なロボットは犯罪に使用される場合もありそれらのロボットを野放しにしておくことは治安維持上好ましいことではない。そのためネットワークが一括してそのロボットたちの再利用を特権的に行うことになった。

 ネットワークはロボット専用金融機関を持っている。ロボットが働いて得た賃金はすべてそのネットワークの金融機関に一括して預金され、その一部は運営資金という名目でピンはねされている。そしてロボットが壊れて廃棄されたときはそのロボットが所有していた残金は全額ネットワークのものになるのだ。

 ネットワークには管理用の一時保管庫はあるのだが常時大量のロボットを入れておく倉庫はないため捕獲された無一文のロボットには一時金を融資し賃貸格納庫の斡旋もしている。

 高度な専門分野の仕事や機密性の高い仕事以外ではコストの面から新型ロボットを所有するより必要なときに賃金を払って中古ロボットを雇用するほうが経済的である。

 人間が仕事中に怪我をしたり死んだりすれば大変な事である。しかしロボットなら壊れてもいくらでも替えがある。ネットワークに報告すればすぐに次のロボットを手配してくれる。それに元々所有者のいないロボットなので廃棄処分代だけ払えば弁償もしなくてよいのだ。いちいち文句ばかり言って仕事をしない人間を採用するよりネットワークの中古ロボットを採用する企業や公共団体が増えてきた。

 この組織は設立当初から常に黒字運営となっていて年を追うごとに潤沢な資金が増える一方である。最近では民営化するという意見も出始めているがまだ依然として政府運営である。関係省庁からの不要な人材が大量に天下りしているので事務所内のある一室では色々な役職名がついた何もしない人間で空気がよどんでいる。

 しかし同じ事務所の別室では委託業者が戦場のような慌しさで働いている。数社の委託業者はそれぞれ回収、格納庫の斡旋、ロボットの派遣業務、賃金管理等を請け負っている。特にロボット回収は危険を伴うこともあり専門業者でないとできないのだ。

 使えそうな廃ロボットが捕獲されるとすぐに自己管理用のプログラムがインストールされて登録が完了となる。そして簡単な点検整備の後、それぞれの職場に派遣される。
  (2008.02.24) 

その1にもどる   つづく

  © 2008 田中スコップ 路上のゴム手
作品topにもどる
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送