「黙祷」 (その2)


 「商工青年団連絡会議所」はほぼ全ての市町村に支部がある。田舎の地方支部ではメンバーが二、三名しかいないところもある。しかし各支部から一人か二人来ても全国大会ともなれば圧倒的な数が集まるものだ。

 この全国大会には国からの補助金が出るようになっていて一定数以上の人数を集めないと翌年からの予算が減額になってしまう。私個人としては別に減額になったからといってこんなに大規模な大会にしなくてもいいと思う。しかし幹事になった支部と大会運営委員が自分の代で地味になったのでは面目がないと躍起になって大会を盛り上げようとしているのだ。そのため都道府県単位での会員数に応じて本部が強制的に出席人数を割り当てている。

 全国大会の半年ぐらい前から人数確保のため全ての会員に出席者の募集が始まる。しかしほとんどの会員は平日の昼間に自分の仕事を放ったらかしにしてまで来ようとしたがらない。ある程度は各県の連合会から交通費が出るが日当までは出ない。結局人数を割り当てられた支部の役員連中は自分達が率先して出席せざるを得なくなってしまうのだ。そのためここにいるほとんどの客は立場上しぶしぶ招集に応じた支部の役員ばかりである。

 近県以外の会員がここに出席するにはわざわざ泊りがけで来なければならない。遠隔地から来る場合は行きと帰りの時間を含めて三日間は棒に振ることになる。これはまさに旅行である。

 全国大会の式典やそれに続く研修会などクソ面白くもないので終了後どこかに遊びに行くぐらいしか楽しみがない。どちらかというと大会よりはそちらのほうがこの旅行の目的といってもいいぐらいだ。我々の県ではこの後コンパニオンをあげてのドンちゃん騒ぎの宴会が催される予定である。

 普段はおとなしい会員も地元の監視の目がない開放感と集団心理により性格が豹変し調子に乗って乱行に及ぶ者がいる。特に自分の家がそこそこ大きな会社のドラ息子とその関連会社の取り巻き連中で形成されるグループがあり、そいつらはいつもコンパニオン相手にここでは言えないような無茶苦茶をする。そのため「商工青年団連絡会議所」の名前を出して宿を予約すると断られる場合あり、いつも適当な会社名をでっちあげて宿を予約している。  
  (2008.07.13)

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