愛・世界博 宇宙電波館(その54)


 指がスイッチに触れた。そしてそのまま指先に少し圧力をかけた。赤いボタンが壁に向かって沈んでゆく。私はとうとう目の前にある宇宙電波照射スイッチを押してしまったのだ。

 部屋の照明が暗くなり、赤いボタンの上にある「宇宙電波照射中」という表示灯が点滅し始めた。そして体の芯がむず痒くなる感覚が起こってきた。その感覚は思う間もなく圧倒的な快感に代わり、ほんの数秒で私の陰茎は腹部に接するほど激しく勃起した。そしてそのまま私はその快感によって立っていられなくなりガクリと膝をつき、長期間溜っていた精液が一気に噴出し始めた。

 ドクンドクンと脈打つように陰茎の管を液体が通過してゆく。

 ああ気持ちがいい。

 私の陰茎は精液を放出するたびにかすかに上下運動をして揺れるので、体内から解き放たれた粘性流体は方向性を持たず自由に飛んでゆく。あるものは放物線を描いて床に落下し、またあるものは私の胸部に達して付着した。

 「宇宙電波照射中」の表示が消えてもまだ私の一部分が固まったままピクピクと震えている。一度に出る精子の量は思春期から今までで一番たくさんの量が放出されたのではいかと思う。床に数個の白い斑点ができて、点灯した照明の光が反射している。

 しかし余韻に浸る間もなく扉の向こうから扉をガンガンと叩く音が聞こえる。ここの掃除のおばさんだ。

「お客さん、終わりましたか? 次の方が待っているので早くして下さい」

 私はせかされている。急いで壁に取り付けてあるトイレットペーパーを引き出し、私の汚れた部分を拭いた。まだ感覚が鋭くなったままなので、トイレットペーパーで先の部分を拭くとまだピクピクと反応してしまう。そしてトイレットペーパーを折り返して胸まで飛んで付着した精液も拭いた。

 汚れたトイレットペーパーを投げ捨て重い鉄の扉を開けて外に出た。すでに脱衣所には次の客が来て服を脱いでいた。最初ここに来たときは次の客がいたらびっくりしたが今日は次の客と目が合っても、会釈して挨拶する余裕があった。次の客も何度かここに来て慣れているのであろう。

 私は服を着て「宇宙電波体験コーナー」を出た。

 廊下に前回来た時には無かった物を発見した。壁の腰の高さぐらいのところにアルミニウムのお椀を伏せたような形の突起があり、その突起の上には説明が書いてある。

「これは宇宙電波除去装置です。人体に有益な宇宙電波は通常三ヶ月程度体内に留まり有害宇宙電波から体を守るようになっています。その際副作用として性的持続性が失われる場合がありますが、有益な宇宙電波が消失すればすぐに回復しますのでご安心ください。有益な宇宙電波を体内に留め有害電波から身体を守ることにより自然治癒の作用が促進されますので疾病等がある方はなるべく有益な宇宙電波を消失するまで体内に留めておくことをお勧めしますが、その必要のない方はこの宇宙電波除去装置に触れることにより即時に宇宙電波を体外に放出する事が出来ます」

 いつからこんな物がついていたのだ。説明には続けてこう書いてあった。

 「なおこの宇宙電波除去装置は当館の宇宙電波体験コーナーをご利用して頂いたお客様より数件のお問い合わせがございまして、急遽設置いたしました。有益な宇宙電波は健康には害はございませんが当方の説明不足により不安を抱かれた方々にはこの場をお借りして深くお詫びを申上げます」

 そうか私は不能になったわけではないのか。私の体には特に悪いところは無いのでこの際だから宇宙電波を除去してしまおう。私はその宇宙電波除去装置に指先を触れた。

 指先で静電気が起きたときのようにパチパチという音がして、一瞬だけ目の前が暗くなった。そして触れた指先が蚊に刺されたように痒くなった。本当にこれで宇宙電波が私の体から出て行ったのか。私は指先をボリボリと掻きながら薄暗い通路を通って外に出た。

 私の不能状態が回復したかどうかは家に帰ってみないと確かめようがない。ただ気分はよかった。溜りに溜っていた物が大量に出たので性的な満足感が得られたのだ。頭の片隅に巣くっていたどんよりとした重い霧のような物が払拭され、爽快感に包まれていた。  

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  © 2006 田中スコップ 路上のゴム手

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