愛・世界博 宇宙電波館(その36)


 現在、一線を越えようとしているのだが、大変なことになる前に無粋ではあるが、彼女に確認を取り、返事によってはここから先には進めない。

「ゴム持って来てないし、このまま入っちゃったらまずいんじゃないかな」

 事務員は私の下から答えた。

「いまさら何言ってるんですか。せっかく良い気持ちになろうとしているのに、そんなものを着けたら全然気持ちよくないし、こすれて痛いから嫌です。前の彼氏だって、いつも着けていたんですよ。あんまり痛いから、お願いだから取ってって頼んでしてみたら、ものすごく気持ちが良かったけど、彼ったら、それから私を避けるようになっちゃったんです。どうして避けるのって電話で聞いたら、もしかして出来てたら責任取れないから、もう危ないこと止めようって言うんです。心配しないで、もしものことがあったらお嫁さんになってあげるからって言ったら、電話が切れちゃって、それっきりなんです。私だって安全な日かそうでない日かはわかります。それにあんなものを着けていたら、服を着てするのといっしょじゃないですか。まったく興醒めです。ゴムなんか着けてするセックスは本当のセックスじゃないです。愛情なんか感じられないです。だから、そのままでいいですから、さあどうぞ」

 彼女は両足を広げた。しかし、どうぞといわれても困る。私も少し怖くなったので、体を離そうとしたら彼女は私の体にしがみつき、離れようとしない。悲しいかな私の意志とは関係なく、下半身の一部は硬くなったままだ。少しだけしてすぐに止めれば最悪の事態にはならないかもしれない。私の欲望が、禁断の行為を肯定している。

 先を少しだけ挿入してみた。あたたかい。

 私はすぐに抜こうとしたが、彼女が私の下半身を両足で押さえて引き寄せたものだから、私の一部が彼女の奥まで全部入ってしまった。私はあまり動くとまずいと思いじっとしていると、彼女は両足の力を緩めたので、抜こうと思って腰を浮かせると、また彼女は足の力を入れて引き寄せた。私の意志と関係なく彼女の中を私が往復してしまった。私はいけないと分かっていても本能的に腰が動き始めた。彼女は恥ずかしいほど大きな声を上げ始めた。

「ああ、もっと動いてください。気持ちいいです。ああ、ああ」

 狭いシングルベッドが軋んでいる。隣の部屋に誰か泊まっていたら恥ずかしい。私は彼女の口を塞ぐように、唇を合わせた。彼女は激しい息遣いで、

「んー、んー」
 と言っている。私が唇を彼女の口から離すと、

「ああ、もっとです、もっとです」

 と言って私にもっと激しく動くことを要求している。私はさらに彼女の中を激しく出たり入ったりしていると、段々とベットの上のほうにずれていって、とうとうベッドの壁で彼女の頭がゴンゴンと当たり始めた。彼女は、

「ああ、いいです。痛いです。ああ、いいです。頭が……。いいです。ああ、痛いです」

 と言ったので、私は動きを止め、体制を立て直そうとして、抜こうとしたら、彼女はまたもや足で私の体を抑え、

「ああ、抜かないでください。やめないでください」

 と叫んだ。私は身動きが取れなくなったので、

「さっきから頭がベッドに当たっているから痛いんじゃないかな。そんなに僕の体を足で押さえたら、動けないよ」

 と彼女に私が動けないことを訴えたら、

「いいんです。少しぐらい頭が痛くてもいいんです。気持ちいいですから、そのままでもっと、もっとしてください」

 と事務員が要求していたのだが、頭を打ちすぎてさらに彼女がおかしくなったら困るので、私は仕方なく、彼女をぶら下げたまま、後ろに下がって再度激しく股間同士をぶつけ始めた。

 暫くの間は気持ちが良かったのだが、あの忌まわしい宇宙電波の影響で、快感が次第に薄れ、いきり立っていた私の一部分が段々と硬度を失っていった。私はそれでも腰を動かしていたが、萎びた部分がピタピタと彼女の股間に当たるだけで全然回復しようとしなくなった。私は動きを止め、彼女から離れてベッドに横になった。

 事務員はまだ満足していないので彼女は私の股間を触ったり、舐めたりして、回復させようとしたが、一度萎びてしまったものは再度硬くはならなかった。彼女は私に向かって言った。

「こんなんじゃ全然物足りないです。途中でやめるなんて嫌です。どうしちゃったんですか? わたしみたいな子が相手だったら、こんなことになるはずないです。ありえないです。私に失礼だと思わないんですか? ふざけないでください」

 私も一時は本当に回復したのかと思っていたが、やはり直っていなかったのだ。

 事務員は私の部屋のバスタオルを体に巻き、携帯電話を持って部屋から出て行った。彼女はその格好でフロントまで行ってスペアキーを借りたのだろうか。その夜はもう私の部屋には帰ってこなかった。

 私は目を瞑り、「宇宙電波館」で味わったあの圧倒的な快感を思い出した。そして明日こそは、事務員や他の社員たちの目をくらまし、あの宇宙電波の快感をもう一度味わうのだ。どうせ私は人間の女では感じない欠陥人間なのだ。

 私は何も衣類を着ないまま、まもなく深い眠りについた。

 翌朝、ドアをドンドンと叩く音で目が覚めた。



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