愛・世界博 宇宙電波館(その17)




  やられた。なんだこれは。現地の人は毎日食って慣れているかもしれないが、日本人の口には合わないのではないだろうか。しかもスプーンもフォークも無い。どうやって食うのだ。と思っていると、奥から店員が水を入れた洗面器のようなものを持ってきた。これで手を洗えというのか。

   私は周りを見回してみた。よく見ると確かに他の客も手で食っている。しかし麺類がテーブルの上にあるのは私たちだけだ。他の客はフライドチキンのようなものや、パンのようなものにカレーみたいなものをつけて食っている。スパゲッティのようなものを手で食うのはいかにも汚らしい。私は店員を呼んだ。体のごつい店員がまた来た。

「フォークか箸をもらえないかな。手じゃ食べられないよ」

「ココノ客は手デ食ウキマリにナットルゲ、ワリバシ使ウガ森林破壊ナルベシ。ワレラノ国、手で食ウ。文句ナクシテ手デ食ワレヨ」

 どこで日本語を習ったのだ。私は諦めて洗面器に手を突っ込んで洗った。彼女はおしぼりで手を拭いただけでスパゲッティをつかんで口に近づけている。下を向く彼女の髪の毛にその真っ赤なスパゲッティもどきが付きそうだ。あの強烈な唐辛子とニンニクの香りで女子事務員は目が涙目になっている。

  そしてとうとう事務員はその物体を口に入れた。しばらく口をモグモグさせてこちらを見て言った。

「意外とおいし……。げほっ」  

  口に入れた最初はなにも感じなかったようだが、少し時間が経てば猛烈な辛さがやってくるみたいだ。私は食べるのをやめようかと思った。事務員は口の周りに付着した赤い唐辛子をおしぼりで拭き取り、水を飲んで言った。

「辛いけどいけますよ。私はこのくらい辛い方がいいですね。辛いほうがダイエットにいいんです。食べないんですか? おいしいですよ」

  事務員はさも平気だという風に言ったので私も大丈夫かなと思ってそのスパゲッティ風の麺を手でつまんだ。人差し指に逆剥けが出来ていて、麺が少しでもその部分に接触すると、ものすごくしみる。

  私はおそるおそる口に入れた。


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