愛・世界博 宇宙電波館(その4)


 部屋の照明が急に暗くなり、赤いボタンの上にある「宇宙電波照射中」という表示灯が点滅し始めた。すぐに体の芯からむず痒いような 感覚が起きた。そしてそれはやがてものすごい快感に変わって、立っていられなくなり、ガクリと膝をついてしまった。

 ほんの数秒の内に私の陰茎は腹部に接するほど激しく勃起し、勢いよく射精してしまった。体中がビクンビクンとして、アゴの下あたり まで精液が飛んで付着した。そしてその快感は「宇宙電波照射中」の点滅が終わるまで続いた。

 電波の照射が終わって部屋が明るくなり呆然としていると、ドアをガンガンと叩く音が聞こえた。この部屋担当の掃除のおばちゃんだ。

「終わりましたか、お客さん。次の方が待っているんで早く出てください」  

 私は壁に掛けてあるトイレットペーパーを取って体に付いた精液を拭き取った。床に付着した精液も拭こうとするとドアの向こうから、 まるで私がしていることが分るかのように、

「汚れたものはそのままにしといて結構ですよ。お客さん」

 と言うのが聞こえた。  私はトイレットペーパーをそこらへんに投げ捨てて鉄のドアをあけて脱衣所に戻った。すぐに掃除のおばちゃんが入っていって掃除を始 めた。ヨロヨロと脱衣カゴからパンツを出して穿いていると、手馴れているのか、もう掃除を終えておばちゃんが出てきた。そしてすぐに 外で待っている次の客に声をかけて、中に入れた。まだパンツを穿いている最中じゃないか、ちょっと待ってくれよ。黒いカーテンの向こ うから次の客が現われた時、私はドキッとして目をそらした。急いで服を着て、貴重品をロッカーから取り出し、逃げるように薄暗い出口 の通路を通って外へ出た。

 真夏の白昼、暗いところから急に明るいところへ出ると、太陽が黄色く感じて、眩暈がしそうだ。宇宙電波館の裏側から賑やかな表通り にフラフラと歩いていった。無意識のうちにまた宇宙電波館の入り口まで来てしまった。もう一度入ってみたい。周りをキョロキョロ見回 した。私のようなおっさんには誰も気にとめていないようだ。こそこそと入場する者を何人か目撃した。私は心の中でそんなにこそこそし なくても万博のパビリオンなのだから堂々と入れよ、と思った。私はしばらく入り口の前を行ったり来たりを繰り返し、思い切って堂々と 入ろうとしたその時、携帯電話の着信音が鳴った。

 平静を装って電話に出た。

「あなた、どこにいるの。子供も疲れちゃったみたいだし、もう帰りましょうよ」

「わかった。腹が減ったから会場でご飯を食べて帰ろう」

「もう私たち食べちゃった。新幹線に乗るとき駅弁でも買って食べてよ。これから退場ゲートに向かうからあなたも来てね。じゃっ」  

 私は入場を諦め、家族と合流する場所に向かった。


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