愛・世界博 宇宙電波館(その3) 


  しかしみんな、切羽詰ったような表情をしている。
 あまり楽しそうじゃないな。それでもなぜ並ぶのだろう。行列の先頭を見てみるとそこにはドアが四ヶ所あり、それぞれのドアへ約五分ごとに人が入っていく。こちらには出てこないので違うところに出口があるのだろう。まあ万博のパビリオンなのでそんなに怪しいところでもないと思う。


 四十分ぐらいして私の順番がやってきた。私の後ろを見るとやはり三十人ぐらい並んでいた。さっきその部屋に行ったばかりの人がまた並んでいた。たまたまその人と目が合ったが、その人は恥ずかしそうにモジモジしてすぐに目をそらした。掃除のおばちゃんが扉の向こうから出てきて部屋に入るようにと言った。モップを持った掃除のおばちゃんは館内の案内人を兼任しているのだろうか。私は扉を開いて中に入った。


 ドアを開けても他の人が外から見ないように黒いカーテンが引いてあった。ドアを閉めてカーテンをくぐると目の前に「脱衣所」と書かれた看板が置いてあった。前の人はちょうどパンツを穿き終わったところで、上半身はまだ裸だった。その人はこちらを見るとビクッと一瞬、驚いたようだがそそくさと服を着て出て行った。

 その脱衣所の壁にも説明が書いてあった。
「宇宙電波体験コーナーをご利用の際には、衣類が汚れる場合がございますので必ず着衣をすべて脱いでから宇宙電波室にご入室ください。なお磁気カード等を持って入室されますとデータが消える場合がございますので貴重品共々横の電波遮断ロッカーに入れて鍵をかけ、ロッカーキーを持って入室してください」


 なんだか健康ランドに入るみたいだ。


 宇宙電波室の入口上部には入室可のランプ表示が灯っている。私は服を脱ぎ、鉄製の重いドアを開けた。中は二畳分ぐらいの広さで、大きな赤いボタン型のスイッチがある。床が少し湿っている。さっきの掃除のおばちゃんがモップで拭いたのだろう。換気扇が常時回っているようだが、少し汗くさい。


 赤いボタンの下にはまたもや注意書きがあった。


「宇宙電波はこのボタンを押すことにより二十秒間照射されます。外で待ちのお客様への迷惑となりますので、連続での体験はできないよう設定してあります。ご希望の方は一度外に出て、再度入館していただきますよう、よろしくお願いいたします」

 そうかこのボタンを押せばいいんだな。私はボタンを押した。


その2へもどる  つづく
電波館topへもどる
  © 2005 田中スコップ 路上のゴム手
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送