愛・世界博 宇宙電波館(その61)


 私の股間はすでに膨らんでいたが彼女にはできるだけ感情を出さないように話した。

「だめだよ。もうすぐ会社だから」

 女子事務員のペースに巻き込まれるとまた変なことになりかねない。彼女はそれ以上何も言わずにスカートを引っ張って皺を伸ばした。そしてワゴン車は会社に到着した。私の股間も次の納品先のことを考えるとすぐに萎んだ。

 会社に着くなり私と事務員はまた納品伝票を持って倉庫に行った。次の納品先も量が多いので事務員がいてくれると助かる。今度も瞬く間に商品がワゴン車に詰め込まれた。事務員が当然のような顔をしてワゴン車の助手席に乗ったところで、私は倉庫に来ていた社長に呼び止められた。

 私が事務員を連れて行くと会社の事務作業が止まり、彼女といっしょに事務をやっているアルバイトのおばちゃんが途方に暮れて困っているらしい。社長は事務員を連れていかないようにと言った。

 事務員が自分の仕事をほったらかしにして営業について回るのはよくないと思う。手伝ってくれるのは大変ありがたいのだが、また変な展開になって性的衝動が抑えられなくなると困る。私達はいっしょにいてはいけないのだ。社長が彼女を引き止めるよう私に言ってくれたおかげで、抑制が効かない私の感情にブレーキがかかった。

 一件目の納品先が思ったより早く済んだので、もう私一人でもいいだろう。

 私はワゴン車の助手席に向かって歩き、窓ガラスをコンコンと叩いた。事務員がワゴン車の窓を下げて顔を出した。先ほど社長が来て、行くなと言っていたことを伝えた。事務員はしぶしぶ自動車を降りて、ロッカーに行き運動靴をサンダルに履き替えた。

 私はそれから一人で納品先を回り、営業活動もして事務所に帰るのが夜七時頃になった。一昨日よりは少し早く帰れたので、今日は子供と少しは遊べるかもしれないと思った。

 会社に帰るとなぜか事務所の電灯がついている。他の営業マンが報告書でも書いているのかなと思い、ドアを開けて中を見回すと、事務用のパソコンの前にあの女子事務員が座って仕事をしているではないか。

 事務室の入り口の横にある壁にスイッチが並んでいる。そのスイッチは事務所内の蛍光灯のスイッチだ。節電のため各蛍光灯のスイッチがそれぞれ独立しているので必要なところ以外はつけない決まりになっている。事務員は入り口のところしか蛍光灯をつけていなかったので彼女の周りは薄暗く、彼女はパソコンの画面の明かりに照らされている。

 私は自分の机の上の蛍光灯のスイッチをいれて無言で席に向かって歩いた。事務員の横を通り過ぎるときに横目で彼女のほうを見ると、彼女は仕事をしているのではなく自分のパソコンでトランプゲームをして時間をつぶしている。要領がいい事務員は仕事をとっくの昔に済ませているのだろう。

 彼女は普段かけないメガネをかけ、パソコンの画面を凝視している。私は彼女がメガネをかけているのを始めて見た。

「あれ、君って目が悪いの?」

 事務員はパソコンの画面を見ながら無表情で答えた。

「普段はコンタクトなんですけど、一人の時はメガネをかけているんです。晩ご飯をごちそうしてくれるって約束だからずっと待ってたんですよ。いままでなにやってたんですか?」

 私は夕飯をおごるなんて約束などしたおぼえはない。腹が減ったら家に帰ってさっさと飯を食って寝ればいいんだ。そして私は事務員が言うことを無視して机の上のブックエンドに立てかけてある報告書を出して書き始めた。

 事務員の方を横目で見るとパソコンの画面が彼女のメガネに映りこんでいる。事務員がマウスをカチカチと押しながら私に話しかけた。

「お腹すいたんですけど。どこかおいしいところに連れて行ってくださいよー」

 私はこれから報告書だけでなく今日注文を受けた商品の仕入れ依頼書を在庫係のおばちゃんに明日渡さないといけないし、運送屋さんにメールも入れておかないといけないので、まだ時間がかかりそうだ。私は彼女に言った。

「僕の仕事はまだたくさん残っているから先に帰ってご飯を食べたほうがいいんじゃない?僕に付き合うと遅くなっちゃうよ」

 私の机の上にあるノートパソコンのスイッチを押して電源を入れた。パソコンが起動するまでの間も私は報告書を書いていた。事務員は返事をせずにパソコンのキーボードをカチャカチャと押し始めた。今度はメールでも打っているのか。

 私は報告書を書き終え、パソコンで商品の仕入れ依頼書を作成し始めた。当社も取扱量が少ない時期はすべて手書きだったのだが、品数が増えてくると仕入れから在庫の管理、販売までパソコンで連動するようなシステムになった。取引先一覧リストから商品リストで商品を選び数量を入力し顧客一覧から販売先を選んでマウスでクリックすれば仕入れ依頼書ができる。昔の手書きに比べ随分と簡単になったし、不良在庫を抱えることも少なくなった。

 私はコピー機兼用のプリンターのスイッチを入れて起動するのを待っている間、メールをチェックした。



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