愛・世界博 宇宙電波館(その1) 

 そのパビリオンは広い万国博覧会の片隅にあった。長蛇の列が出来ている人気のあるパビリオンに比べて、こぢんまりとしていて、いかにも低予算で、出展している国が割り当てをこなしているだけのやる気がない雰囲気が漂っていた。

 夏の日差しがきびしく、一緒に来た妻と子供も、暑さでまいっていた。屋根があって、エアコンの効いている所だったらどこでもいいから入って休みたかったのだ。そのパビリオンは真っ白の外観で、近くに寄ってよく見ると変な渦巻き模様が一面に描かれている。近くに看板があり、説明が書いてある。その渦巻き模様は宇宙から人体に悪影響を及ぼす電波を遮断する作用があるらしく、微弱な電波でも細胞は常に壊されていて、そのパビリオンに入って数分間、電波を遮断することによって人体の細胞が自然治癒の作用で活性化し、ガンや病気にかかりにくくなるらしい。

 建物の屋上には長い避雷針のようなアンテナが立っていて、そのアンテナは反対に良い電波を集めるらしい。電波なんてものは目に見えないので本当かどうかわかったものじゃないが、涼しそうだったので入ってみることにした。 私は子供の手を引き、妻は私たちの後に続いて、その建物の中に入っていった。中は薄暗く、所々ライトによって照らし出されているものは、私には理解不可能な文献や電波の測定用具、実験設備、聞いたこともないような名前の科学者が書いた古代からの電波年表等々、興味の無いものばかりだった。来館者も家族連れは、我々の他には無く、いかにも電波が好きで、普段から興味がある人達ばかりのようで、リュックを背負い、館内で配布される資料を集めたり、展示物を見ながら熱心にメモを取ったりしている。

 どうやら家族連れで来るには、場違いな所に来てしまったようだ。外の賑わいに比べて、静かではあるが、居心地の悪い雰囲気に包まれている。マニアにとっては宝の山かもしれないが、万国博覧会なのだから、もうちょっとこの排他的な雰囲気はどうにかしてほしい。



その2へつづく
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  © 2005 田中スコップ 路上のゴム手
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