一言
青春の最中 2006.12.13

 構成される材料の中でアンコの重量が占める割合が大きい食べ物として私がまず第一に思い浮かぶものとして最中(モナカ)があります。私は和菓子の中でも特にモナカが好きなので、もし饅頭や鯛焼きの横にモナカが並んでいたら私はモナカを手にとってしまうでしょう。

 あのパリッとしたモナカの皮とやわらかいアンコのどちらも欠くべからざるものです。焼きたての鯛焼きにもパリッとした部分はあるのですが、それは鯛の形の鉄板に挟まれて少し生地がはみ出た部分だけです。鯛焼きのパリッとした部分というのはいわば製造の過程で出来た偶然の産物です。

 特に鯛焼き屋では効率化のため完成した製品を保温のため発泡スチロールの箱に入れて保管しておき、客が来たときにその箱から出して販売されることが多いと思います。その箱から出された頃には既に尻尾の先のパリッとしたところが箱の中の湿気により萎びています。たとえ奇跡的に焼き立てを購入しても家に持って帰っている途中で柔らかくなってしまいます。

 やはりアンコとパリッとした皮のハーモニーを楽しめるのはモナカ以外には思いつきません。

 パリッとしているモナカの皮には他にも役割があります。モナカの皮は見た目に良いとはいえない粘り気がある黒っぽい餡子という物体を見事に隠蔽し、形の無い物に整然とした秩序を与えています。餡子だけを食べることは不可能ではないのですが、甘ったるくてあまりたくさんは食べられません。

 私はモナカいう言葉には温かみと程好い厚さのふくらみを感じます。夏の炎天下でモナカアイスと普通のバニラアイスがあると、どちらもアイスの温度には変わりが無いはずなのですが、モナカアイスのほうが暖かい感じがしてあまり食べる気になりません。

 それどころかモナカアイスは溶け始めるとすぐにパリッとしたモナカの皮がフニャフニャになって噛みちぎる事も出来ず、噛んだ勢いで溶けた中身が出たりします。

 もっとも私はアイスが詰まったモナカはモナカとは認めていません。

 そのモナカというふくらみをもった言葉は最中(さいちゅう)と読むとまるで違った印象になります。

 例えば誰もいないと思って会議室のドアをノックもせずに開けたところ、中で不倫の真っ最中だった場合、

「あっ、おとりこみの最中(さいちゅう)でしたか、失礼しました」

 と言ってドアを急いで閉めるよりも、

「あっ、おとりこみの最中(もなか)でしたか、失礼しました」

 と言う方がモナカと言う暖かさとふくらみを感じてより淫靡な感じがします。

 そして私の経験上、青春時代の男子達は不意にある部分がふくらんでしまうことがよくあります。その場合、

「僕たち青春真っ最中」

 と胸を張って言うより

「僕たち青春まっもなか」

 と言うと、よりふくらみと汗臭い暖かさを感じることが出来るのではないでしょうか。

 「まっもなか」ってなんだか言いにくいです。




 © 2006 田中スコップ
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