一言
物々しい雰囲気 2006.08.21
 
  昔のフィルムが出てきたので、大量のネガを写真屋さんに持っていってCDに焼いてもらいました。

 学生時代、私が帰郷したときに親がコンパクトカメラをくれたので、どこに行くときもそのカメラを持ち歩いていました。白黒写真が好きだったのでフイルムはネオパンを入れて撮影していました。特に楽しくもない学生時代でしたが、ことあるごとに写真を撮っていたので、東京にいたときの記録はたくさん残っています。

 とにかくその当時、あまりやる気のない学生だったので、勉強をするでもなくバイトをするでもなく、野良犬のように都内をうろついていました。

 1986年東京サミット間近の4月29日の天皇誕生日、ゴールデンウイークの真っ最中で学校は休みです。何もすることがなく暇をもてあましていたので池袋をうろついていた時の写真を見つけました。都内では過激派によるお手製の迫撃砲が発射されたりしていたので当局の方々が神経を張り詰めて、厳重な警戒態勢がしかれていたようです。

 そんな中、私はデモ隊と機動隊が睨み合っている場所に出くわしてしまいました。その時の写真がこれです。






 私を含めた野次馬がたくさんいます。

 そして不審車両を機動隊が取り囲んでいます。もしかすると時限爆弾が仕掛けられていたりして。

 

 これは大ニュースだと思いカバンの中からコンパクトカメラを取り出し写真を撮っていましたが、上の写真の耳に手を当てている人がこちらに近づいてきました。どうやら私服の警察官みたいです。私に向かって話しかけてきました。

「ねえちょっと、きみ何やってんの」

 私は突然話しかけられたものだからびっくりしてオドオドしながら、答えました。まるで挙動不審者です。

「いや、あのちょっと写真を……」

 私服の方は、鋭い目で私をジロジロ見て、

「あそこでデモやってる人たちと友達なんじゃないの? 記念写真撮ってるんだろ?」

 と言って私を過激派の一味ではないかと疑っているようでした。

 私は否定しました。

「違いますよ。たまたま通りかかっただけですから……」

 異変に気づいた周りの機動隊の方々も数名で私を取り囲み始めました。一部の野次馬の視線がこちらに向いています。

 このままどこかに引っ張っていかれて犯罪者にされたらどうしよう。へたに逃げたりしたらよけいに怪しいと思われるので言われるままにおとなしくしておこうと思いました。もっとも屈強な機動隊の方々に囲まれているのでその場から脱出するのはまず不可能です。

 私は警官の要求どおり持っていたカバンの中身をすべて路上に出しました。運転免許証と学生証も取り上げられ、私の名前や生年月日、学籍番号等すべてメモされて返してもらいました。あとで何か警察から出頭命令が来ないか心配しましたが結局何も呼び出しはありませんでした。

 私は警察官達から開放されると機動隊の後ろから私を見ていた野次馬の間をすり抜けて逃げるように去っていきました。

 © 2006 田中スコップ
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