一言
花火大会 2006.08.05
 
 私が住んでいる町では年に一度、江戸時代から続いているという大規模な花火大会があります。大規模といっても、私は他の花火大会を見たことが無いので本当に大規模なのかと言われれば自信がありません。

 小さい町の商工会員が中心になって手作りで仕掛け花火を作成しています。打ち上げ花火の本数は他のメジャーな花火大会にはかないませんが仕掛け花火が多いので、毎年花火大会の日だけ町の人口が五倍ぐらいになって大混雑します。

 打ち上げ花火も山に囲まれた盆地を流れる川の対岸で保安距離ギリギリの所で打ち上げるので、音が山に反響してかなりの迫力があります。この体全体に響く花火の音はどんなに高級なスピーカーを使っても再現不可能でしょう。

 私も消防団に属しておりますので、当然のことながら花火当日は駆り出されております。今までゆっくりと花火大会を鑑賞したことはありません。消防団には交通整理、会場見回り、駐車場整理等、色々な仕事がありますが、私の所属する部は花火打ち上げ場付近の消火活動をすることになっています。

 川の近くといっても大きい玉の花火は観客席から保安距離が足りなくなるので、対岸の山頂付近から打ち上げます。当然木が生えているし、枯れ草もあります。たまに山に火の粉が落ちてきて火がつきます。放っておくと山火事になり、火が消えるまで花火大会が中断してしまいます。昼間のうちに川からポンプ車で水を上げて十分散水しておくのですが、たまに山火事になります。

 私が待機しているところから至近距離のところに打ち上げ場があります。毎年一番迫力がある場所で花火を見ることができます。ヘルメットを被っていないと花火の破裂した残骸が落ちてきて頭に当たるので、気をつけていないといけません。まるで砲弾飛び交う戦場の最前線にいるみたいです。

 今年は幸いなことに山火事にはなりませんでしたが、数年前に私がこの場所の担当ではなく対岸の観客席に近いところにいたことがありました。その年は空気が大変乾燥していて山に火がつき、かなりの時間花火大会が中断しました。無線で交信しているのを聞いていますと、かなりのパニックになっているみたいです。

 ああ、あっちでなくてよかったと胸をなでおろしましたが、観客にはこういったハプニングが好きな人もいます。山火事を見て興奮して大騒ぎをしています。消防団の当事者は気が気ではありません。やっと消火が終わって花火が再開されましたが、終了時間が決まっているため、残りの花火を短時間で全部打ち上げ、仕掛け花火にも一斉に点火されたので、恐ろしいほど迫力がある花火になりました。心臓の弱い人がどうにかならないか心配になるぐらいの大迫力でした。

 小さい町で開催される花火なので、私はほとんどの商工会の方々とも知り合いです。趣味で音楽を作っているので、パソコンで打ち込んだ曲をCDRに焼いてこっそりと目立たぬように商工会の事務局に持って行き、大銀滝というナイアガラの滝のような花火の部分でかけてもらうように頼んだりします。すると商工会の事務局の方もこっそりとその曲を紛れ込ませてくれるので、大観衆の前で私の曲が何気なくかかります。

 誰も私の曲がかかっていることに気がつきません。今年もヘルメットを被って花火の破片がバラバラと落ちてくるところで、ナイアガラが流れるのを見ながら自分一人だけで曲を聴きながら感動しておりました。

 数年をかけ、ナイアガラが消えるまでの時間を研究して、曲を花火に合わせて終わるように作ったので、ほとんど火が消えると同時に曲も終了し、観客席から拍手と歓声が起こっているのが聞こえてきます。観客は曲を聴いて拍手をしているのではないと思いますが、拍手が聞こえたのが非常に嬉しかったです。

 私の曲がかかったのがわかったのは私自身と、曲を毎日うんざりするほど聞かされていた家族です。家族はまたこの曲か、と思ったみたいです。こんなことが出来るのも小さい町ならではのことではないでしょうか。こっそりと町の行事の一部分を私物化して、作品発表をしている私を許してちょうだいね。
   
 © 2006 田中スコップ
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