一言
「う」について 2006.07.15


 「う」という字はそれだけでは言いにくいと思います。

 「鵜飼い」のように「う」だけでなく何か他の文字がくっついていると言いやすいのですが、「鵜」だけを発音すると、急いでいるのに目の前に壁があって急につんのめって止まらなければならないようなリズム感が悪い印象を受けてしまうのは私だけでしょうか。

 例えば鵜飼いが鵜を飼育しすぎて増えてしまい、町に天秤棒を担いで鵜を売りに行くとします。天秤棒の両端には深い桶に入ったたくさんの鵜が頭だけ出してキョロキョロしながら、時々素っ頓狂な声を出して鳴いているとします。

 その鵜飼いは鵜を売り歩いているので、客から見れば「鵜屋さん」、鵜飼い本人は自分のことを「鵜売り」と言っていることにします。

 鵜屋が鵜を売っている掛け声はこんな感じでしょうか。

 「う、う、鵜売りでござい。う、う、鵜売りでござい。鵜はいらんかね」

 なんだかみぞおちの辺りを殴られているようです。物売りの掛け声としては非常に言いにくいと思います。「―」を付けてみます。

 「うー、うー、鵜売りでござい。うー、うー、鵜売りでござい。鵜はいらんかね」

 多少言いやすくなったようですが間延びしてリズム感が悪いです。今度は「っ」を付けてみたらどうでしょうか。

 「うっ、うっ、鵜売りでござい。うっ、うっ、鵜売りでござい。鵜はいらんかね」

 多少は大きい声が出そうな気がします。しかしこれでは男性が快感に酔いしれた最後の瞬間みたいで大変恥ずかしい印象を受けます。本当に「う」という名称の物は言いにくいです。たまたまそこに鵜を買おうとお客さんが来たとします。

 「鵜屋さーん、待っておくれよ。鵜を一つおくれでないかい」

 「へい鵜一丁」

 「それにしてもあんたいい男だねえ」

 段々落語みたいになってきたのでこの辺にしときますが、誰が鵜のことを「う」という名前に決めたのでしょうか。最初に「鵜」のことを「う」と言った人はその呼び名に違和感がなかったのでしょうか。「鵜飼い」とか「川鵜」のように別の言葉をくっつけていないと言いにくいです。

 瓜売りが瓜売りに来て瓜売り切れた。

 鵜売りが鵜売りに来て鵜売り切れた。

 アクセル全開すぐブレーキの連続という感じでストレスが溜ります。


 © 2006 田中スコップ
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