一言
「ひ」という文字 2006.06.17

 私が字を読めるようになったのはいつのことだったのか覚えていません。しかし私の記憶の中で一番古い文字は多分「ひ」というひらがなです。

 幼少の頃より「ひ」という文字が異常に気になっています。小学校の運動場で全員が体育座りをしているじっとしている場面で、私は先生の話を聞かず、地面に「ひ」という文字を書いていました。なぜ「ひ」なのか未だに分からないのですが永年の癖になっています。

 運動場の土は表面が細かい小石で覆われていますが、そのザラザラとした微細な小石を払いのけると固く締まった土の表面が出てきます。最初は「ひ」という文字を小石の寄せ集まった表面に書きます。簡単に「ひ」が書けるのですが小石を手で払うとその「ひ」は消えてしまいます。固まった土の部分に指で文字を書こうとすると、爪の間に土が挟まって爪が汚く見えるし、あまりやりすぎると指先から血が出てきてくるかもしれません。

 そこで自分の周りで手ごろな小石を探し、その小石で地面を引っ掻いて「ひ」と言う文字を書きます。小石が無いときは仕方なく指で地面を掘って、「ひ」を書きました。

 社会人になった今でも、無意識のうちに机の上や自分の自動車のボンネットに埃が溜まっていたら指で「ひ」を書いてしまいます。特に「ひ」という文字が好きというわけでもないのに書くのです。おかしな奴だと思われるでしょうが、特に害を及ぼさない癖ではあるので矯正しようとは少しも思いません。

 「ひ」と言う文字を自分なりに考察してみますと、「ひ」はひらがなの中で最も柔らかい文字だと思います。

 二つ続けて「ひひ」と書くとまるで女性の豊かな胸のようです。また単独での「ひ」は乳首のアップようにも見えます。

 水道の栓が完全に閉まっていないときに落ちる寸前の水滴にも見えてきます。女性の胸にしても、水滴にしても「ひ」は柔らかいものがなにかにぶら下がっている印象を受けるのです。

 また「ひ」を逆さにした「Ω」のような形もよく指で書いています。おできのような柔らかい突起物を連想します。お餅が焼けて膨らんだようにも見えます。どちらにしても指先でちょっと触りたくなるような感じがします。

 「ひひひひひひひひ」と書くと、気持ち悪い奴が謀略を巡らせて笑っているような表現になりますが。私には数人の男が連れションをしているように見えてきます。柔らかくぶら下がっているものが多量にあるといったところでしょうか。このようなことを書くのは非常に恥ずかしいのですが、もしかすると私は「ひ」フェチなのかもしれません。「の」でも「ろ」でも「も」でも柔らかそうな文字はあるのですが、やはり「ひ」が一番官能的です。

 誰がこんな「ひ」というひらがなを発明したのでしょうか。日本人の柔らかいものへの憧れの結晶として生まれてきた文字だとしか思えません。何十年も「ひ」と付き合って、なお指で「ひ」を書く癖は続きます。
 © 2006 田中スコップ
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